約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

 わたしのせいで涼くん達に危害が及ぶのは堪えられない。しかし、当主の要求を1度でも飲めばこの先脅され続けるのは火を見るより明らかだ。

「言え、私の物になると言え!」

 当主が圧を弱め、気道が確保された。

「言え!」

 赤い目が強要する。わたしは一旦目を閉じ、深呼吸。
 わたしに形勢を逆転させる鬼の力は残されていない。この場を運良く逃げ出せても、報復として大切な存在が傷つけられるだろう。

「言うんだ、早く!」

 急かされ、目を開けた。当主の背後に大きな窓があり、絶望するわたしが映っていた。

【既にあなたは四鬼家の庇護下に置かれています。鬼姫の言葉を借りれば監視下です。浅見さんは因われた鳥、自由な空を飛ぶ事は叶いません】

 いつかの柊先生は諦めた風に言っていたけれど。

「……違う」

「なんだ?」

「あなたに、良いようにされる位なら死んだ方がマシ! 運命? 約束? 足かせになるならそんなの信じない!」

 あのガラスを突き破ろう。わたしは四鬼家に飼われる鳥になんてならない。

「バカ、何やってるんだ!」

 助走をつけ、さぁ飛び立とうとした時、当主より早くその声に咎められた。

「はぁ、お前はいつもそうだよな? 勝手に思い込んで妙な誤解してさ。こっちの気持ちを聞きもしない」

 乱暴にドアが開き、訪問者は大股でこちらへ歩いてくるとガバッと抱き締めてくる。

「バカ、1人で無茶するんじゃねぇ」