約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

 涼くんが入院している病院は空港から20分程度の場所にあり、四鬼家サイドから連絡が入った為か医院長自らが対応してくれた。

 ただ詳しい容態はおばさんでないと話せないらしい。わたしが彼のベッドへ駆け寄ると医院長は出ていき、2人きりにしてくれる。

「涼くん」

 静かな病室。まるで童話のお姫様みたく彼は静かに横たわり、規則的な呼吸を繰り返す。一見、穏やかに眠っている。

「涼くんってば」

 呼びかけに反応してくれない。代わりに繋がれた医療器具が電子音で心拍数などを伝えてきた。

「海で溺れるなんて、らしくないよ。わたしに血をあげた後だったから貧血を起こしたの? そうなんでしょう?」

 いつも噛んでいた腕に触れれば温かい。わたしは膝を下り、そこへ頬を寄せて泣いた。

「ごめん、ごめんなさい涼くん」

 神様お願いします、早く涼くんが目を覚ましますように。
 願いを込め手を握ると身体の奥が熱くなってきた。

「お願い、涼くんを奪わないで」

 わいてくる熱を涼くんへ移す。頭の中がぐらぐらしたが構わない。更にギュッと手を握る。

「目を開けて、涼くん」

 この感覚、目が赤くなっているだろう。鬼の性て振り回してきた分、鬼の力で挽回できるのならしたい。

 ーーお願い!

 涙と熱さで歪む視界の隅で涼くんの睫毛が震えた。