やはり四鬼さんに会いに来た? 身構えていると美雪さんは気取って、首を横に振った。

「本当にお兄ちゃんに用事があっただけ。千秋やあなたをどうこうする気はない」

「……」

 四鬼さんにはともかく、わたしに攻撃的にならないとは申し訳ないけれど信じられない。
 こんな精神状態で美雪さんと対峙するのは正直きつい。

「沖縄に行く方法を教えてあげましょうか?」

 警戒心を解かないでいると、仲直りの提案をする声音で言う。

「夏目涼が心配なんでしょう? 無事を確かめたくない?」

「……それは」

「千秋には頼み難いわよね。他の男の為に沖縄に行きたいなんて言えるはずない」

 その通りだ。わたしは四鬼さんに向き合うと宣言した。そんな側から涼くんに会いたいと言い出せない。
 もちろん事情が事情なだけに打ち明ければ四鬼さんは何とかしてくれるだろうが、彼に余計な心配をかけたくなかった。

「別にあなたが夏目涼に会いたいっていうの、否定しないよ。夏目涼が好きなんだよね?」

「え?」

「好きな相手が事故に遭えば、居ても立ってもいられないのは当たり前じゃない」

 わたしを全否定すると思いきや、意外な言葉。
 美雪さんを改めて見詰める。

 美雪さん、少し痩せたかもしれない。四鬼さんに失恋し、泣いて、泣いて、泣いたんだと察せられた。
 だからこそ彼女に自分の決意を伝えなければいけないだろう。

「四鬼さんときちんと付き合っていきたいと思ってます。涼くんへの想いはケジメをつけたいです」

「……そう、なの」

 わたしの決意は美雪さんを傷付けると分かっていたものの、はっきり告げておく。

「だったら沖縄に行きたいと当主に頼むべきよ」