約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

「あ、あの」

「ちょっとだけつまみ食いしてもいい?」

「え、えっと」

 雰囲気で何を求められているかは察せられた。

「キスするのは嫌?」

「嫌と言うわけじゃ、その、なんというか緊張してしまって」

「僕も」

 2人でベッドへ腰掛ける。甘い香りと声音に胸が高鳴る。そっと頬へ触れられ、四鬼さんを見上げた。
 初めてのキスに身体を硬くしない方が無理。ただでさえ整った顔立ちに見詰められると息を飲んでしまう。

「好きだよ、桜子ちゃん。大好き」

 真っ直ぐ欲しがってくれる。わたしでいいと言ってもくれた。こんなに大事にしてくれる相手はもう現れないだろう。

 ーー静かに目を閉じる。

 程なくして柔らかい感触が降ってきて、ファーストキスのはずなのにこの感じを知っている気がした。

 これが四鬼さんと結ばれるのが運命、縁という事かもしれない。




 四鬼さんが周囲の様子を見に、部屋を出ていった後、わたしはキスの余韻を巡らせていた。
 軽く触れただけの口付けなのに強烈なインパクトがあって、それはデジャヴみたいな。

 きっと頬は真っ赤なまま。大人しく身体を休めるなんて出来なくて、うろうろ歩き回る。
 そんな折、校庭から話し声が聞こえてきた。

「ここにしようぜ、日陰だし」

 サッカー部員と思われる生徒達が保健室の前へ座る。水分補給をしていることから休憩時間なのだろうか。

「早くレギュラーになってベンチで休憩してぇな」

「今年は新入部員もかなり入ったし、レギュラー争いが凄そうだ」