「はぁー」

 翌朝の食卓、わたしの溜息が淹れたてのカフェオレを冷ます。全然眠れなかった。

「桜子、今日は休んだら? お母さんもパート休むから」

「ううん、行く。授業に遅れたくないし」

 強盗らしき侵入者と鉢合わせたわたしを心配し、警察が暫く家の周りをパトロールしてくれるらしい。お父さんも様子を見に帰ってくると言う。

「授業はともかく、部活は入らないの? 入れば帰ってくる時間がお母さんと同じくらいになるのに」

「入らないって言ったよね? それより授業はともかくって何? 勉強についていけなくなったらどうするの?」

 お母さんの言い分にイライラする。

「涼くんに教わればいいじゃない? 涼くんはサッカーがやりたくて今の高校にしたって聞いたけど、本当は【鬼月学園】にも行けたんでしょう? 凄いわよねぇ」

 涼くんの名を出され、ますます苛立つ。
 小中高一貫教育の鬼月学園。高校から入学するのは稀であり、確かに凄い、凄いからこそーー

「これ以上、迷惑掛けたくない」

 目玉焼きをつつくと破れた黄身が流れる。添えたレタスをしっとりさせ、まるで涼くんに纏わりつくわたしみたいじゃないか。