「つまり隣町に住んでる祖母さんが来て、おじさんが怪我したと言ってきたかと思えば、包丁を持って襲ってきた? お前、頭大丈夫?」

 鬼とのやりとりを脚色せず伝えてみたが、ご覧の通り。

「はぁ、通報は俺がする。お前はおじさんか、おばさんに連絡しておけ。鬼だ、人ならざるものだとか、バカバカしい。強盗に入られて混乱したんだよ」

 取り付く島もなく、涼くんは話を打ち切ってしまった。何者かに侵入されたのは認めるものの、それ以外は信じない。

「鬼は居ないにしても、人ならざるものは目の前に居るじゃない?」

 恐怖体験を混乱の二文字で片付けられるのが悔しく、納得いかない。

「わたしは涼くんの血を飲まないと生きていけない、人ならざるものだよ! バカバカしくなんかない!」

 涼くんは反論に呆れて肩を竦める。

「あのな、そんな所で突っ掛かるな。お前はお前だろ? それとも両親や警察にも同じ事を言うのか?」

「それは……」

「もういいから、ここは俺に任せとけって。俺の家に行ってろ」

 ーーその後、涼くんの通報を受け警察がやってきたが、室内に犯人とおぼしき対象は居なかった。

 また、お父さんは怪我などしておらず、お祖母ちゃんとも連絡が取れる。事件があった時間、お友達と芝居を観ていたそうだ。