約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される



「悪あがきしてるのね」

 夢の中、身体の不調がなくなり、わたしは鏡を覗く錯覚に陥る。真っ白の空間で鬼姫と向き合っていた。

「痩せ我慢などしないで夏目涼の血を飲めばいいのに」

 鬼姫は笑う。

「嫌。涼くんを鬼にしたくないの。鬼になれなくて死んでしまう事もあるんでしょ? どちらにしろ堪えられないよ」

 わたしが怒る。

「鬼になっても死んだとしても仕方ないの。鬼の一族は血が無いと生きていけない。必要な犠牲よ」

 鬼姫はわたしと同じパジャマを着て、声や仕草も似ている。彼女はわたしの一部なんだ。でも別々の考えを持っていており、ひとつになれてはいない。

「私はいっそ夏目涼が犠牲になればいいと思うわ。だって夏目涼のせいであなたは運命に抗おうとする。いい? 四鬼の花婿を愛せばいい、それで幸せになれる」

「涼くんを犠牲にしろなんて、どうしてそんな酷い言い方をするのよ!」

「あら、酷いのはどちら? あなたは四鬼の花婿をないがしろにしているじゃない。四鬼様を1度は受け入れたのでしょう?」

「それは……」

 先に言葉に詰まったのはわたしだ。