あれからどうやって部屋に帰ってきたか覚えてないが、わたしは宿泊訓練前日まで体調不良で寝込む事となる。

 頭痛、吐き気、倦怠感といったあらゆる不快な症状に襲われ、ベッドからまともに出られない。柊先生の処方した薬も効かなかった。

「桜子ちゃん、大丈夫?」

 お母さんに仕事を何日も休ませる訳に行かず、今日は1人だと四鬼さんに言うと柊先生を連れて看病にきてくれる。

「寝たままですいません」

 酸素が全身に巡らないのか手足の先は冷たく痺れた。着込んでも寒気がおさまらなかった。
 2人の顔も滲む。度々体調を崩してきたものの、これ程苦しいのは初めてかもしれない。

「具合が悪いだし気にしないで。それより柊、なんで薬が効かない?」

「可能性のひとつとして、禁断症状でしょうか」

「禁断症状?」

「浅見さんは薬や性的接触ではなく、夏目君の血を直接飲んできました。いきなり血を絶ち、身体がついていかないのかもしれません。本来ならば徐々に血の摂取量を減らしていくべきだったのですが……」

「つまり夏目君の血が必要? 僕の血じゃ駄目なのか?」

「今の浅見さんはいわゆる飢餓状態。残念ですが食らい尽くされる危険がある以上、千秋様の血は使えません。ちなみに採血された血では症状の緩和せず、直に吸血しないといけないかもしれませんね」