約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

「ん。ありがとう、涼君。大好き!」

 わたしへ背を向けた高橋さんが涼君に抱き付く。

「満足したならさっさと戻るぞ。先に行ってろ。俺は薬をもう少し探す」

「分かった! 早く来てね」

 キスして満足したのか、素直に涼くんの言う事を聞いている。背後で打ちひしがれるわたしに気付かず、ご機嫌な足音で去っていった。
 わたしだって一刻でも早くこの場から離れたいが、突き付けられた現実は逃してくれない。

「高橋さんに脅されてるって、どういう事?」

 高橋さんが居なくなるや、すぐ問い詰めた。這って出てくるわたしを涼くんは鼻で笑う。

「盗み見するのが趣味なのか? 変態」

 茶化して事を荒立てない言い回しをされる。

「そんなはずないじゃない! 高橋さんに脅されて付き合ってるの?」

「桜子には関係ない」

「関係あるよ! わたしのせいだよね?」

「大きな声出すなよ。キスくらい大した事じゃねぇ、高橋もそのうち飽きるだろ。俺がつまらない奴って分かるまでの我慢だ」

 涼くんは至って冷静だ。わたしは拳で床を叩きたいくらいなのに。浅く呼吸をして熱された怒りを散らす。

「涼くんはつまらなくなんかない! わたし、涼くんと高橋さんが付き合うのにこんな条件があると知っていたら……」

「知ってたら?」

 さっと距離をつめ、涼くんが正面へ屈む。意地悪で挑発的な顔でこちらを見る。

「高橋にお前の秘密をバラすって脅され、仕方なく付き合う事にしたって話せば、俺を慰めてくれる訳?」

 くすぶる吐き気が甘い香りで紛れる。涼くんの香りは四鬼さんや柊先生と違う。優しくて、それでいて切ない。

「慰めるって何? わたしが原因で高橋さんと付き合うなんておかしい。自分を大切にして」

「俺はこんな風にしかお前を守ってやれない。なぁ、申し訳ないと思うなら慰めろてみよ」

 髪を耳にかけ、輪郭を撫でてくる。それから唇へ指をそわし、慰めの意味とやらを伝えられた。