約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

「うん、嬉しいよ。みんなが憧れる涼君を彼氏に出来るんだもの。嫌々でも付き合ってるうち、あたしを好きになるかもしれないじゃん? そうだ、ここでキスしようよ!」

「はぁ?」

 高橋さんに後ろめたさは全く感じられない。逆にわたしの方が鼓動を乱され、パキッと包み紙が折れた。

「良いのかなぁ? 浅見さんがあたしの首を噛んだのを話しちゃうよ? 今朝はその部分を消毒して貰う感じでキスマークつけてくれるだけだったけど、物足りないなぁ?」

 吐き気をもよおして肩口を噛む。この吐き気、覚えがあるーー高橋さんと言い合いになった後に見た夢だ。
 鬼姫が同性の血を吐いていた景色、あれは夢じゃなかったのかもしれない。あの時、高橋さんの首を噛みたい衝動にかられた所までの記憶しかないが、実際に噛み付いた?

「キスして、涼君」

 命令じみた言い方をする高橋さん。

「ーーはぁ。目、閉じろよ。んなギラギラされるとやりにくい」

「うん!」

 まさか言われるがままキスしちゃうの? 信じられなくて教壇から顔を出す。すると涼君がこちらに意識を向け一瞬驚くも、背伸びする高橋さんをくるりと回して顔を近付けていった。

 2人の唇が重なったかどうか確認できない絶妙な角度。たった数秒の仕草がとても長く感じられた。