ぴこん、手元の携帯が鳴る。噂をすれば涼くんから。
【今からならいい】素っ気無い了承が送信されてきた。

「起きてたんだ」

「……お前だって起きてるじゃねぇかよ」

 カーテンが開かれ、独り言を拾われてしまう。スウェット姿の涼くんが眠そうに襟足を掻く。

「お、おはよう。そっちに行っても?」

「いいって送ったけど?」

「ま、まぁ、そうなんだけどさ」

 わたしの部屋から涼くんの部屋への移動はシンプルにジャンプする。
 小さな頃からこの方法で行き来しているので慣れたもの。ただ、このところはわたしが一方的にお邪魔していた。

「今日は学校行く気か?」

 入室するなり涼くんはすぐカーテンを閉めた。まるで登校して欲しくないような言い方。でも言い返したりしない。文句を飲み込む。

「うん、行きたいな。でも、グループとか出来上がっちゃってるよね? 仲に入っていけるか心配だな」

「どうせお前は俺以外のヤツと仲良くしないくせに。中学の時、クールビューティーって呼ばれてたの知ってるだろ?」

「クールビューティー?」

「誰ともつるまず、一人でも平気そうって意味だとさ」

 涼くんはベッドに腰掛け、腕まくりする。血を分けて貰える合図に、わたしは喉を鳴らす。
 クールビューティーと呼ばれようとどうでもいいや。そそくさと涼くんの前にしゃがむ。