「保健室で堂々とサボるとは不謹慎極まりないですねぇ」

 あからさまにベッドの様子を確かめる。ちなみに先生が来るまで椅子に座っておしゃべりしていただけ。決してやましい行為はしていない。

「僕は授業に出なくても内容に遅れたりしないよ。万が一、桜子ちゃんがついていけない場合は家庭教師をするさ」

「嫌味を真面目に返さないで下さい、千秋様の知性は承知してます。おや? 千秋様が観光雑誌を読むなんて珍しいですね?」

 四鬼さんがベッド脇で読んでいた雑誌に気付く。

「ん? あぁ、これ? 1年生は宿泊訓練があるんだって。桜子ちゃん、知ってる?」

「はい。わたしは欠席すると思います」

 近いうちにクラスで班決めを行うが、わたしには関係ない話だ。

「えぇ! なんで行かないの? 沖縄だよ、ちょっと早いかもしれないけど水着を着られるんだよ?」

「千秋様は1年生ではないので参加できませんし、宿泊訓練とは旅行ではないんですが?」

 四鬼さんの耳には先生の指摘が全く入らない、いや入れない。
 ウキウキした様子で付箋が沢山貼られた雑誌を見せてきた。