約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

 キスマークという刺激的な単語に目隠しを外そうとしたが、先生に手を握られてしまう。

「夏目君に血は必要ないと告げたのでしたね?」

 親指から小指の順、形と長さを確かめるよう先生はなぞる。わたしもなぞられながら先生の華奢で細い指を確かめる。見えないからこそ生なましい数え方だ。

「言いましたよ。涼くんを鬼にする訳にはいかないですから!」

「それが彼を追い込んだんでしょうね。浅見さんは鈍感で本当にいけない。いいですか? 夏目君はあなたが好きなんですよ?」

「せ、先生、知っていたんですか?」

「夏目君の好意を否定しないんですね?」

「涼くんから聞いたんですか? わたしは昨日初めて知りました」

「……はぁ、可哀想に」

 可哀想、それがわたしへ向けた同情ではないのは感じられた。

「浅見さん、ベッドへ」

「ベ、ベ、ベッド!?」

 カーテンを引く音がする。

「あまりにも夏目君が不憫で萎えてしまいました。貧血症状を和らげる薬を用意しますので、飲んだら軽く眠って下さい」

 わたしは現状床に転がっておりベッドに上がる余力はない。しかし自分で移動しなきゃ、先生に何をされるか分からない。

 キスマークのあたりがジンジン痺れ続け、そこから力を奪われているみたい。これが吸血以外に活力を得るという事かもしれない。

 ーーと、気付けた時は後の祭り。
 わたしの意識がぷつりと途絶えたのだった。