約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

 好きと言われた次の瞬間には終わっている告白。関係の進展を望まないうえ、わたしの返事も不要らしい。
 わたしは涼くんに異性として想われていたんだ。驚きや喜びより何より、正直寂しかった。涼くんを家族みたいに大事に想っていたから。
 わたしにとって家族への想いは恋情より確かな愛情だ。

「んな顔するなよ。桜子にとって俺は単なる幼馴染みで、兄貴みたいなもんだろ?」

「わたしは涼くんを家族みたいに想ってる。大事なんだよ!」

「俺はそれじゃ足らない。桜子は妹じゃない」

「妹じゃないよ、涼くんは家族なんだって!」

「だから、それじゃ物足りない。ガキなんだよ、桜子は」

「子供じゃないよ、ちゃんと涼くんを大事に想ってる」

「なら俺とキスやそれ以上をしたいか?」

「それは……」

「ほらな」

 涼くんは立ち上がり部屋を出ていこうとする。ここで止めなければ、わたし達は今まで通りとは行かなくなるだろう。

 物足りないと言われてしまっても、わたしは涼くんに普通の人間として暮らして欲しい、鬼にならないで欲しい。本当の事を話さないのは幸せになって貰いたいんだ。

 いっそ今日まで鬼になる危険を伴い、血を与えさせていたのを謝れたら嫌われるかもしれない。あぁ、けどやっぱり涼くんに嫌われると考えただけで泣きたくなる。

 いや、もう嫌われてしまったんだ。

 ドアが静かに閉まり、わたしは何も言えないまま遠ざかる足音を聞く。

 胸に手を当て、これで良かったんだよねと心へ投げかけるも答えは返って来なかった。ぽっかり大きな穴が空き、どんな言い訳でも塞がらなそう。

 わたしは涼くんを傷付けた。酷く傷付けた。

「ごめんなさい、ごめん、涼くん」

 涼くんが飲み干したグラスに謝罪は響くはずもなく、わたしはその場へ崩れた。