指摘され携帯の履歴を辿ってみる。と、強盗に入られた日から今日に至るまで涼くんから着信がある。
 盗まれた時点で電源を落とされ繋がらなかったみたいだが、確かに何度も掛けられていた。

「お前とのメールのやりとりを他人に読まれたら秘密がバレると思って、こっちは時間を作ってそれを探していたんだぞ!」

「ご、ごめん。実は勘違いしていて盗まれてなかったの。だからメールの内容は読まれてないの。探してくれてありがとう、見付かったのをすぐ言わなくて本当にごめんなさい」

 言えた、一気に早口だけど言えたーーが。

「嘘つくなよ。お前、嘘つく時、そうやって早口になるんだ」

 即座に見破られてしまう。

「わたし、噓なんて……涼くんには感謝してる」

 嘘をついてないと言えず、言葉が濁る。

「なら俺の目を見て言え。携帯は本当に盗まれていなかったんだな?」

 咄嗟に論点をすり替えても、涼くんは話題を携帯紛失の件からそらさない。目を見て言えと凄まれるので仕方なく顔を上げる。

 窓辺へ腰掛けた涼くんからは怒りの他に失望も感じた。

 事情の詳細を包み隠さず伝えたとして、今以上の負担をかけてしまうのは分かりきっている。わたしが吸血したせいで鬼になってしまうどころか、死んでしまう危険がある事を話せば間違いなく嫌われてしまう。

 わたしは沈黙した。

「なんで黙る? 何かあった? 話してみろ」

 麦茶に手を伸ばし飲み干す涼くん。その喉元を仰ぐ。こんな状況なのに血が欲しくなる性が嫌だ。

「……ちゃんと話せばやるよ、血。飲みたくなってるだろ」

 違う、飲みたいけど飲みたくない、飲んじゃいけない。