「皆さんにご迷惑をかけて、すいません! わたしは大丈夫です。これから自宅に帰って休みますね! ありがとうございました!」

 この状況でお祖母ちゃんの家に行きたいとは発言できず、かといって学校へ戻りたくもない。
 気まずさがピークに達し、早口で一気に告げて逃げるよう走り去る。

「ちょっと桜子ちゃん!」

「なによ、あれ。失礼な人ね」

 去り際、2人の声を背中で拾う。わたしは心の中で謝り続けた。



「はぁ、はぁ、はぁー」

 バス停から全力疾走で自宅まで駆け、玄関前に座り込む。

 涼くんの血を貰いにくい今、無駄な体力を消費したくないのに。親切心からの行動を否定しかけ、頭を振る。

 頭を振ると、何故か四鬼さんの微笑みが剥がれて真顔になる映像が流れた。わたしは彼の笑顔しか見ていない割、冷たく突き放す表情を形成できる。

「桜子?」

 振り向くと、なんとお祖母ちゃんが立っていた。

「どうしてここに?」

「……お母さんから聞いてない? とにかく立って、中で話しましょう」

「う、うん」

 いつもならお祖母ちゃんは季節の花についてお喋りするが、庭の花へ視線もくれない。それに差し出された手を握るとーー冷たい。なにやらお祖母ちゃんは緊張しているみたいで、嫌な予感がした。