約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

「結婚話は置いておいて。血を飲む者が他にも居たというのは安心したのでは?」

 仲間意識は持てないものの、それはある。異質な体質を今日まで孤独に抱えてきた。

「それはーーはい。先生は誰から血を貰っているんですか?」

 聞くと、先生はルームミラー越しにわたしを伺い、ハンドルの縁をこつこつ弾く。

「失礼を承知でお尋ねしますが、浅見さんは夏目君以外に男性経験は?」

 先生は真顔だ。

「はい?」

「性的交渉を夏目君以外ともちましたか? よもや夏目君を毎回吸血していた訳じゃありませんよね? キスやハグなどで飢えを潤していたでしょう?」

「キス? ハグ? 涼くんと? わたしが?」

 復唱すると頬がボッと燃える。

「そ、そ、そ、そんな、涼くんとするはずないじゃないですか!」

「ーーえ? してないんですか?」

「当たり前です! わたしと涼くんはそういうのじゃなくて、いかがわしい真似してませんし! というか、涼くん以外ともしてないです!」

 身振り手振り付きで誤解を解こうとすると、先生が堪えきれない風に吹き出す。

「そこまで全力で自分が乙女であるのを主張しなくてもいいですから。
鬼が活力を得るには血を飲む他、性的交渉で補えます。私は専ら後者ですね。吸血はどうしても相手に負担をかけてしまいますので、ご褒美感覚で頂いてます」

「性的……交渉」

「あなたは周りに鬼がいなかったので知らなくても仕方ない。まぁ、ゆくゆく成熟した女性となれば自然と気付いたでしょうが」