「千秋! 貴方は葉月高校に用事があるのでしょう? 浅見さん、でしたっけ? 体調が優れないのでしたら保険医に診て頂けば?」

 四鬼さんとの間に割って入ってきて、校舎を指差す。仰る通り、病院より保健室の方が近い。

「美雪、どうしてそんな意地悪を言うんだい?」

「意地悪じゃなくて、あたし達は学園の代表として招かれているの。寄り道している暇はないわ!」

 わたしの介抱を寄り道と切り捨てて、四鬼さんの腕をぐいぐい引っ張っている。ただ、見るからに華奢な身体では四鬼さんを動かせない。

 居たたまれなくなり、鞄を返して欲しい旨を合図してみる。しかし、四鬼さんはわたしの視線に微笑む。
 こうしているうち、次のバスの到着を報せるランプが点った。

「坊ちゃま、お言葉ですが病院にかかるとしても予約が必要ですし保険証もいります。ここは美雪様と同意見で、まず保険医に診てもらうのが良いかと」

 車を移動させるギリギリまで運転手は朽ちを挟まず、言い終えると深くお辞儀をする。