「ーー帰ります」

 わたしは改めて出て行こうとした。強引に引き止められたら抵抗する算段だ。男性4人相手じゃ到底敵わない計算だが、わたしには私が居る。
 私はわたしが一族に否定的な態度をとろうと干渉せず、ひたすら四鬼さんを案じているようだ。
 結婚しないとまで言い切られ、彼は失望しているに違いない。わたしはそんな四鬼さんを直視出来なかった。

「送りますよ、浅見さん」

 柊先生は交渉の決裂を喜んでいるみたい。

「道中、話しながら帰りましょうよ。対話は大事。一方的に打ち切るのは良くないです」

 そんな言い回しをされ、カチンときてしまう。

「そもそも先生が揉めさせたんじゃないですか!」

「そうとも言えますが。何も知らせないのは騙してるのと同じじゃないですか?」

 ねぇ千秋様、先生が含んだ物言いをする。

「言える事と言えない事があるのくらい、柊にだって分かるだろう!」

 四鬼さんが机上を激しく叩き、拳をガタガタ小刻みに震わす。また何かを言いたそうにするが塞き止めてしまう。
 あんなに歯を食いしばってまで言えない事柄とはなんなのか。尋ねてみたい気もするが、やめておく。
 わたしを子供を産む道具として扱おうとしていた以上の秘密、そんなものを聞いてしまえば正気でいられる自信がない。

「彼女は私がお送りしますね。今日のこれで失礼します」

 先生はわたしを廊下へ出し、後手で扉を閉めた。