子を作る機能? つまりわたしは子を産む道具なの?
 ここに集まる人ーーいや鬼達はわたしを道具のように扱う。嫌だ、もうこんな所に居たくない。

「桜子ちゃん!」

 席を立つと腕を掴まれた。それを力いっぱい振り払うと、四鬼さんは悲しい顔をした。
 どうしてそんな顔が出来るの? 全部知っていたくせに。

「無理です。あなた達はわたしと違う、全然違う!」

「君は僕等と共にあるべきだ。前のような生活は出来ないかもしれないが、決して不自由はさせない。ここにいて」

「わたしは鬼姫じゃない、浅見桜子です」

 鬼姫であるのを拒絶すれば、四鬼さんは言いたい事を飲み込む仕草をして宥めてくる。

「君は鬼姫だ。僕が守ると約束する」

「約束ーー四鬼さんは誰と約束するんですか?」

「鬼姫、君とだ」

「わたしは桜子です! 鬼姫として見てくる相手と結婚は絶対にしませんから!」

 生まれながら鬼姫と結ばれる、そう決められ育ってきた四鬼さん。だからこの異常事態を疑わない。わたしはそれが悲しかった、悔しかった。
 運命や約束の響きはロマンチックだけど、いざ自分に舞い込んでみればしがらみとなる。

 場が静まり返った。
 わたしを鬼姫でなく浅見桜子として見るのが結婚の条件、彼等には難しいという答えだ。