約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

 私の目を介し資料を読み込むとクリアに映り、涼くんが貧血に悩まされている記述がある。わたしと似通った症状を起こしていたなんて初耳だ。

「夏目君の貧血は鬼姫による吸血が原因、これは盲点でしたよ。探し求めた鬼姫様が裏切り者の側に居るとはーー灯台もと暗し、と言うのでしょうか?」

「私がその裏切り者の血を飲み、生き長らえたのだと侮辱するの?」

「いいえ、鬼の稀有な力を否定する夏目家など喰らい尽くせばいい。それに夏目君が普通の人間であったなら亡くなっていたと思われます。薄くとも鬼の血が流れていたからこそ、これまで鬼姫様の食料になれたのです」

 涼くんを食料と言いのけた先生に当主が便乗した。

「所詮、人は食料でしかない。夏目涼とやらも鬼姫様の糧となるのも縁だろう。鬼姫様、どうぞ今日からは千秋を召し上がって下さい。鬼は異性の血を欲しますが、鬼姫様の場合は花婿の血が馴染みましょう」

 指名される四鬼さんはびくりと肩を震わせつつ、ぎこちなく頷く。

「僕等は血を吸われるには慣れていない。鬼姫以外に女性の鬼がいないから。でも、君の為ならば血を捧げよう。夏目君の血を飲むのは止めた方がいい、彼を鬼にしたくないよね?」

 私は四鬼さんの顔ではなく首元を見詰め、喉の動きを追う。

「私も夏目君の血を引き続き摂取するのはお勧めしません。眠った鬼の力を呼び起こす可能性が高く、そうなれば一族の均衡が崩れます。夏目君が鬼になったら浅見さんは責任をとって花婿とするでしょう」

「柊! お前は何を言うんだ! 冗談じゃないぞ!」

「鬼姫様は四鬼家に嫁ぎ、強い鬼の子を産むと約束されている! 妹が嫁げなかった腹いせはやめたまえ!」

 春野、秋里の両人が異議を唱える。