四鬼さんが待つ場所はお屋敷と呼ぶに相応しい佇まいで、番人がつく立派な門を潜り到着すると後部座席を開けてくれた。

「いらっしゃいませ」

 ドアマンまで配備され、まるでホテル。深々と頭を下げる彼は鞄を渡すよう促すが遠慮しておく。

 柊先生は伸びをしつつ降りてきて車のキーを別の人へ預けていた。他にも出迎える人はいて、いらっしゃいませ、お待ちしておりましたと口々に言われる。

「他にも誰か、来るんですか?」

「当主と千秋様、それと2、3人です。一族でも立場がある人が揃うので仰々しいですが気にしないで下さい。こちらへーー」

 とその時、ツカツカ靴音をさせて気配が近付いてきた。振り返った先生が顔色を変えたのでわたしも見てみる。

 そこには白い制服ーー鬼月学園の制服を着た美少女が立っていた。少女の登場に周囲が一斉に警戒し、わたしは先生の後ろへ移動する。

「美雪、ここに来てはいけないと言っただろう? 何をしに来たんだい?」

「お兄ちゃんには用はないわ。千秋とそこに隠した子に話があるの」

「帰りなさい。千秋様は美雪と個人的にはお会いにならないと仰っている。許可なく四鬼の屋敷に来ては行けないよ、もう美雪は花嫁候補じゃないんだからね」