翌朝、登校しようと玄関を開ければーー柊先生の車が停まっていた。

「おはようございます、浅見さん」

 颯爽と降りてきて挨拶。

「おはようございます。って何で先生が?」

「朝早くから申し訳ありません。一族で話し合いの場を設ける運びとなりましてね。お迎えに上がりました」

「迎えってーー」

 言いかけた所で涼くんが家から出てくる。今日も律儀にわたしと学校へ向かうつもりなのだろう、時間をずらしてみたが通用しない。

「夏目君もおはようございます」

 先生は涼くんにも挨拶をする。

「カウンセラーが何の用? 話があるなら保健室でしてくれない? おい、早く行くぞ」

 顎で指示されても動かないでいると舌打ちされた。こちらへ回ってきて手を引こうとする。

「浅見さんはこれから四鬼のお屋敷にお連れしますので、学校へは夏目君おひとりで行って下さい」

 涼くんを払い、わたしを後部座席に招く。涼くんの顔がまともに見られない気まずさから逃れたい。わたしはいそいそと乗り込む。

「四鬼の屋敷って何?」

「夏目君にお答えする必要はありませんね。学校側にはきちんと連絡をしておきます」

 今朝のお母さんは早くからパートへ行き、自宅には誰も居ない。柊先生が来ることを知らされていないだろう。

 質問をまともに返さず、エンジンが掛けられた。クラクションを鳴らし発車させる。
 涼くんとすれ違いざま一瞬だけ目が合うが、いつものポーカーフェイスで感情は読めなかった。