約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

 四鬼さんの名を連呼され、とある発言が呼び起こされた。

【夏目君にだって影響が出てしまうよ? 吸血鬼というのもあながち遠くない、血を吸われ続けた人間は血を飲まないと生きていけない者になるんだ】

 警鐘を鵜呑みはしないが、もしも涼くんが同じ体質になったり、悪い影響が及べば堪えられない。
 わたしが四鬼さんや高橋さんと距離を取れば涼くんの気は治まる。けれどもここで折れては駄目だ。

「四鬼さんとは話さなきゃいけないことが沢山ある」

「何を話す?」

「まだ言えない。色々はっきりさせて涼くんに話したい」

 今、相談してしまえば涼くんがわたしに代わり話をつけようとする。それは避けたかった。
 わたしが高橋さんを意識してしまうよう、涼くんは四鬼さんをかなり敵視するから。

「あっそ」

 何かあればすぐ自分を頼る幼馴染みが明確に引く線に、涼くんは珍しく寂しそうな顔をする。

「は、勝手にすれば。貧血起こしても知らね」

 短く切り捨てた涼くんはカーテンを閉めてしまった。

 庭に咲いた花に蜂がとまっている。あの花はお祖母ちゃんが好きな花だ。
 お祖母ちゃんに会って、お芝居の話を聞きたいな。わたしは空を仰ぐ。