約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

 履き慣れないパンプスのせいで道路がぐらつき、水中を歩くのと似ている重さも纏わりつく。
 早く四鬼さんの元に行かないと。ぐっと踏ん張る。

「彼を傷付けたりしたら許さない!」

 気合と共にわたしの中の私が怒鳴れば、なんと一瞬で景色の歪みが矯正された。

 そして、男性はあっさり四鬼さんから降りて正座をすると深々と頭を下げる。

「分かればいいの。私を怒らせないで」

 わたしの意思に反し私が喋り続け、高圧的な話し方は男性を更に萎縮させた。額に大量の汗が浮かび、怯えている。

 私は片膝をつき、男性の汗をハンカチで拭う。拭いても拭いても汗が出てきて、これは恐れからくる生理現象なんだろう。

 男性はついには地面へ頭を擦りつけた。

「お赦し下さい! 鬼姫様!」

 わたしの中の私は謝罪され、くすくす笑う。鈴の音を鳴らしたみたいな笑い声は無邪気だ。

「ですって? どうしましょうか?」

 半身を起こし様子を伺う四鬼さんに結論を委ねる。 
 仮に四鬼さんが許さないと答えれば、私はこの男性を消すのだろう。どんな物騒な方法かは知らないけれど、そうすると思われる。またそうする事が出来るのだけは分かる。