四鬼さんはクレープを食べるのを止め、こちらをじっと見詰めてくる。カップルに見えるかについてどう思っているのか、知りたいみたい。

「ーーえっと、あの、四鬼さんは女の子に優しいですし、わたしもそのうちの1人かな、みたいな? いえ! それはそれで良いんですが」

 わたしだけ特別だと勘違いをしたら後々悲しくなるから。期待してはいけないし、期待もしないとクレープをかじる。口の中のイチゴがとても甘酸っぱい。

「それで良いんです、か」

 繋いだ手を呆れたように離される。

「四鬼さん?」

「桜子ちゃんにだけ優しくあれる夏目君が羨ましいな。僕だって君にだけ優しくしたいけど、そうもいかないんだ。ただね、彼女達に向けるものと桜子ちゃんに向ける感情は全くの別物、そこは信じて欲しい。夏目君に君を渡せない」

「なんでここで涼くんが出てくるんですか? 涼くんは関係ありませんよね!」

「本気で気付いてないの? 夏目君はどうみたってーーいや、よそう。わざわざライバルに塩を送る事はないよね。彼には同情を禁じ得ないけれど」

「? 涼くんは親に言われて仕方なくわたしの面倒をみているんです。そうしないとサッカーをやらせてくれないらしいので。わたしより高橋さんに優しいですよ! メールでこまめに連絡取り合ってるし!」