約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

 四鬼さんは可愛いとか、キレイとかの褒め言葉を全く惜しまない。
 道行く人が振り返ってまで2度見する彼に言われ続けると、なんだかその気になってしまいそう。お姫様みたいな気分になる。

「桜子ちゃんは何にする? 僕はチョコバナナにしようかな」

 夢見心地で歩いているうち、クレープ店へ着いてしまったようだ。メニュー表を差し出され、ハッと我に返った。

「四鬼さん、ここはわたしが!」

 帽子や洋服のお礼としては遠く及ばないだろうがお財布を出そうとするーーが。

「しまった。鞄に入れたままだった」

「ご馳走してくれようとする気持ちで充分。さぁ、どれにする?」

 後ろに他のお客さんが並ぶ気配がし、財布がないのだから代金の支払いを巡って遠慮しても意味はない。

 早く選ばなきゃ。豊富なメニューへ視線を滑らせるも商品名と値段しか記載されておらず、焦ってしまう。

(奢って貰うんだし、四鬼さんが頼むものより安いやつの方がいいよね。あぁ、それだと逆に恥をかかせちゃうのかな)

「ねぇ、桜子ちゃん。季節限定のイチゴにしてみない?」

「え、あ、はい!」

「じゃあ、チョコバナナとイチゴクレープをひとつずつ。ごめんね? どれも美味しそうで迷っちゃった」

 四鬼さんは注文時に言葉を添え、わたしの優柔不断を気遣う。繋いだ手を握り直し、大丈夫だよと示してくれた。

「ありがとうございます。今日はカップルデーなのでクリームを増量しておきますね!」

「ありがとう」

 注文が入るなり、滑らかな作業が目の前で繰り広げられた。

 薄く焼いた生地の上にたっぷりのクリームが盛られ、宝石みたく艷やかなイチゴを行儀よく並べる。それをくるくる手早く巻き込み、わたしへ手渡す。ものの数分の職人技だった。