「似合ってる、最高、可愛い、僕の想像以上だよ! 可愛い! 最高! 似合ってる!」

 着替えて四鬼さんの前へ立つと、彼は盛大な拍手をしてくれる。可愛い、最高、似合ってるを連呼され恥ずかしい。

「ありがとうございます。そんなに褒められたら照れます」

「照れることなんてない。最高に似合って可愛いのは事実なんだ。ねぇ?」

 同意を店員さん達に求め、それぞれが頷いてくれた。鏡に映るわたしはわたしじゃないみたい。ワンピースに合わせメイクと髪のアレンジを施してもらい、大人っぽく仕上がっている。

「これならわたしだと気付かれませんね」

「僕は見逃さないけどね。桜子ちゃんがどんな格好をしていても見付ける自信がある」

 こんな事をさらりと言えてしまうのが四鬼さんだ。

「それと桜子ちゃんの荷物だけど、自宅に届けるよう手配したから」

「あっ、そうだ! お見舞いに来てくれた後から思ったんですが、わたしの家の住所を何処で?」

 わたしの疑問にしばし間が置かれた。

「……ごめん、桜子ちゃんの身辺を調べさせた」

 だろうと勘付いていたが、わたし相手なら誤魔化せるのに正直に告げられる。

「嫌いになった?」

 一気に表情と声音が沈む。

「四鬼さんの立場だと仕方ないかもしれませんね」

「ごめんね」

 言い訳をせず謝罪した四鬼さん。交流を持つ相手を精査するのは危機管理のひとつであり、これは立場が立場だけに責められないだろう。やはり良い気分じゃないけれど。