ここにブティックがあるのは知っていたけれど入店するのは初めて。明らかに高校生を対象とはしていない空気が流れている。
 ふと棚に飾られる小振りのアクセサリーを見れば、わたしが想像した10倍以上の価格だった。

「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」

「彼女がさっき説明した相手。よろし
くね」

「かしこまりました。ではお連れ様はこちらへどうぞ」

 店内をきょろきょろ見回していると、女性の店員さんが奥にある部屋を案内してくる。

「私服なら皆に気づかれにくいし、おしゃれしてクレープを食べに行こう。僕も着替えるからさ」

「え、着替えるって! わたし、お金を持っていませんよ!」

「いやさ、服を贈るのはやめておこうと思ったんだけど、それは僕が選んだ服って意味で。今回は彼女が君に似合うものを選ぶんだ。もちろん桜子ちゃんが気に入るのがあれば、それをプレゼントするから言ってね」

 ーーという訳で、話がどんどん進み、四鬼さんはもうひとりの店員さんと別の部屋へ行ってしまう。

「それでは私達も参りましょうか。四鬼さんが仰った通り、どのようなお洋服も似合いそうですね。選び甲斐があります」

「いや、あの、わたしは……」

「こういう時は素直に甘えてしまう方がスマートですよ。貴女がより素敵になる事が四鬼さんへのお返しになります」

 仕事上そう言うのだろうが、クレープを食べるだけなのに大袈裟過ぎて恐縮する。