どうして高橋さんが嬉しそうなのか、それが分からないわたしじゃない。というより、その理由を話したくてここへ座ったんだろうし。

「夏目君と浅見さんが幼馴染みっていうのも教えて貰った。だから夏目君は浅見さんの面倒をみてあげてるんだね。体調が不安定なのと強盗に遭ったのもあって登下校を一緒にするんでしょう?」

 高橋さんは事実を並べるだけで、間違いはひとつも言っていない。
 ただ間違っていなくとも、言い方が癇に障った。それと自分の話はしたがらないくせ、わたしの件を伝えてしまう涼くんに腹が立つ。
 中学生の頃、家族ぐるみの付き合いをしていると隠さずいた事でどれだけ迷惑をこうむったのか。涼くん本人も承知しているはずなのに。

「あぁ、あたしも夏目君に送り迎えして欲しいなー。犯人とまた遭遇するかもしれないでしょ?」

「可能性が無いとは言い切れないけど、それをわたしに言われても困るよ」

「浅見さんは四鬼様に送り迎えして貰ったら? 付き合ってるんでしょう? 一応名目は交換学生らしいけど浅見さん目当てってもっぱらの噂。さっきも教室に来てた。保健室で会わなかった? あたしが教えてあげたんだよ」

 保健室へ行ったのを知らせたのは高橋だった。クラスメートに囲まれてる中、わたしの行動を把握しているなんて少し怖い。
 質問でたたみ掛けられ、また高橋さんの欲しい言葉を誘導される。