約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

 倒れ込む姿勢でベンチへ崩れ、スカートの裾がめくれたわたしを皆で嘲笑う。

 まさか学校でも危ない目に遭うなんて考えてもなかった。
 実は最近は酔っ払いに絡まれたり、強引なナンパをされる。その理由が涼くん曰く、態度が生意気だから。相手は挑発されていると感じるらしい。

 現に今も先輩を睨みつけてしまう。

「あ? なんだよ、文句あるのか?」

 人数と力じゃ敵わないが反抗心を隠せない。何も言わず睨み続け、顎を持ち上げ凄まれても唇を結ぶ。
 先輩越しにバスが走って来るのが見え、速攻乗り込む段取りを巡らす。車内なら運転手や乗客の目がある。

「そういう強気が逆に煽るんだよなぁー」

 想定外の反応をしても先輩は引かない。それどころか、反らした顎にもう一度触れようとしてくるので振り払う。

「うわ、あっちぃ! なんだよ!」

 先輩は払われた痛みより、わたしの腕の熱さにびくつく。
 わたしはこの場面において肝を冷やさず、燃えるような怒りを発していた。

 口の中が乾きーーごくん、唾を飲む。