約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

「僕の気持ちはさっき言った通り。噓や悪戯じゃない」

「柊先生の妹さん、美雪さんは?」

「嫉妬してくれてるの? それとも桜子ちゃんが責任感じて言ってるのかな? 多分後者だよね」

「……」

「美雪との事も含めて話したい。どうだろう? 柊先生のアドバイスを実践してみない? クレープ食べに行こう」

 手を握りながら、もう片方で俯くわたしに触れるか、触れないか迷う四鬼さん。
 触れられと最初は緊張でビクついてしまうが、不快な訳じゃない。むしろ心地良くなる。
 前髪を撫でるに留まった指を残念に追ってしまい、それが四鬼さんを誤解させた。

「あっ、クレープは嫌? 甘い物が苦手であればレストランはどう? よく食事をする店なら貸し切りに出来る」

「貸し切り?」

「その方が気兼ねなく話せるでしょう? フレンチ? イタリアン? もちろん和食でも美味しい所を手配する。桜子ちゃんが食べたい料理を言ってみて」

「そんな困ります!」

 四鬼さんが出入りするお店となれば高級店であると察せられ、庶民のわたしは怯む。

「僕と出掛けるのが嫌?」

 予約をしようとする四鬼さんがしょげた顔をする。そんな顔をされると断わりづらくなり、ひとまず折り合える案を出すしかない。

「やっぱりクレープがいいです! 駅前に可愛いクレープ屋さんがあるって雑誌で読んだんですよ」

「駅前? 知らないなぁ。よし、貸し切りにしよう」

「キッチンカーで販売しているので貸し切りは出来ませんよ!」

「テイクアウト専門? じゃあ、どうやって食べるの?」

「あ、四鬼さんは食べ歩きはしないですね」