四鬼さんはカーテンに手を伸ばすも開けなかった。先生の提案を受け入れて着席する様子が伺える。

 それにしても2人の対話は生徒と先生ではなく、上下のある関係なのか。四鬼さんは先生を呼び捨て、先生は様付けしている。

「ともあれ、初日で授業をボイコットするとは褒められたものじゃないですね」

「休み時間だと他の生徒が付いてきてしまう、そうすると桜子ちゃんに迷惑をかけてしまうだろう?」

「一応配慮はなさっているんですか」

「一応って何? 僕は桜子ちゃんに嫌われたくない。配慮くらいするさ」

「おや、千秋様にしては随分と弱気じゃないですか? 当主様の反対を押し切ってまで転校したと伺ってますが、浅見さんを鬼月学園へ招く方が四鬼家の総意でしょう? 学園の運営は四鬼家が関わり、寄付金もかなりしています。浅見さんの受け入れは可能なはず」

「桜子ちゃんを鬼月学園へ転校させるのは、彼女の意思を無視する事になる。だからしたくなかった。それと四鬼の力は使いたくない、親の七光りと思われたくないんでね」

「七光り? ふふっ、あはは、千秋様が? グループの一翼を担うあなたを七光り呼ばわりするなんて、まだまだ世界は広い」

「笑い事じゃない! 僕は桜子ちゃんには1人の男として見て欲しいんだ。彼女は僕の気持ちを疑っていて誤解を解きたい」