約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

 お祖母ちゃんの家へはバスで向かう。校門近くのバス停は数人の上級生が既に待っており、部活見学もせず帰ろうとするわたしをジロジロ見てきた。

 先程といい、こういう視線は居心地悪い。気まずさを紛らわす為、携帯電話を取り出す。
 ーーと、それを横から掠め取られる。

「新入生?」

 制服の三角タイを見ればわたしが新入生であると判断がつき、携帯を取り上げた相手が3年生であるとネクタイの色が示す。

「はい、そうですけど……」

 わたしを含め、帰宅部の生徒には集団生活に馴染めない事情がありそう。着崩す制服から素行が滲み出ている。

「可愛いね。彼氏いるの?」

 携帯を取り返そうとする腕を掴み、にやにや笑う。下級生が絡まれていようと誰も止めず、見てみぬ振り。

「は、離して下さい」

「『は、離して下さい』だって、可愛い。だから彼氏はいるのかって?」

 騒ぎにしたくないので無言で身を捩り、抵抗したものの、先輩の行動がエスカレートする。ベンチに座っていた仲間を退かして、わたしと並んで座ろうとしてきたのだ。

 なんとか踏ん張って着席を拒むも、仲間の1人に背を押される。