私や忍や、とにかく神谷家の人間は、元々持っている高い霊力をこの世に適合させながら、この世で“なるべく普通に”暮らすため、身体だけでなく、「霊力」や「精神力」の鍛錬も欠かさず行う必要がある。
高い霊力を野放しにしていれば、そのうち霊力は通常レベルまで下がるかもしれないけれど、私みたいに他人の念や気を受け取り過ぎてしまう「受信機体質」の場合、何もせずに放置していたら、高い霊力に自己が飲み込まれてしまう可能性のほうが高い。
「自己が飲み込まれてしまう状態」というのは、つまり「自分自身を失う」ということだ。
そういう状態で「普通に」日常生活を送れるはずは、当然ない。だから・・・。

「・・私たち、特に私みたいな体質には必要なんだ。自分を護るためにも。それに、体は柔らかいほうが動きやすいでしょ?何かと」
「“何かと”って何だよ」
「え?いろいろ」
「“いろいろ”って何だよ!」
「スポーツとかヨガとか武術とかだけじゃなくて、普段の動作全般的に言えるでしょ?」
「あっ、あぁなるほどお」
「界人、今ヘンなこと想像した」
「してないしてない!してませんっ!」と慌てて否定している界人の姿がおかしくて、つい顔がほころんでしまった。

こういう感じで界人としゃべっても、私は不快な気持ちにならないし、こういう感じでしゃべってる私は「素」というか「自然」に思える・・・気がする。
なにより、界人と私は「合っている」ようにも思えてしまう。

私たちは波長が「合ってる」し、それが「似合ってる」って―――。
つい「錯覚」を起こしてしまう。
それとも「そうであってほしい」という「願望」を抱いてしまう・・・?