「へえ」
「礼子さんの方針なんじゃない?私は綿貫さんにも自分の番号教えてないし、私も綿貫さんの番号知らないし」
「それで原始的でリアルな伝達手段を取っている、というわけなんだね」

ここで真珠も話に加わった。

「うん。たぶん私がまだ高校生の未成年だってことと、実の息子と同じ学園に通ってるからじゃないかな。そのあたりは私もよく分かんないけど、礼子さんは私の父さんと面識あるし、綿貫家は神谷家とも間接的に交流があるから、分かんなくても別にいいの。それに礼子さんは昔、宝石店を経営していて、宝石鑑定士の資格だけじゃなくて、良い品質を見極める確かな眼を持ってるんだ。宝石に関する知識も豊富でね、私に石の選びかたや石を使ったアクセサリーの作りかたを教えてくれたのも礼子さんなんだよ」
「へえ・・雅希はホントに石が好きなんだな。石のこと話してるときは目が輝いてるし、いつもよりめっちゃしゃべってる」
「うん。つい、ね。で、なんで界人はまだ私の隣にいるの」
「え?だって俺の席ここだし!」

界人が指したのは、私の斜め後ろの席だった。

「あ・・・そうだったね」
「で、まーの隣は俺の席よっ!」
「苗字同じだもんね」
「それでも俺らが隣同士になる確率って、そう高くないんじゃね?」と忍に言われた私は、自分の周囲を見渡した。

忍の隣は私で、私の後ろは真珠、そして忍の後ろ――だから私の斜め後ろ――は、界人の席。
今は出席番号順に座っている結果がこれだ。
でも、いくら特進クラスのほうが普通クラスより生徒数が少なくても、仲良くしている友だち四人(忍は身内でもある)全員が横に並ぶ席になったことは、奇跡に等しい確率だと言えるだろう。

私は口元に笑みを浮かべながら「うん・・そうだね」と言った。