「・・・真珠ちゃんも食べたそうだな」
「えっ!?いや別に私はそんなっ!」
「ことあるよなぁ。めちゃ欲しそうな目でたまご焼き見てるし」
「実は食べたいなぁと思ってて。ホントに美味しそうだし」
「じゃ、半分こしよっか」
「ありがとぅ、界人くんっ・・・あっ、これは珍しい・・」
「塩味?」
「うん。父さんがね、たまご焼きは塩味しか食べないんだ。たまご焼きに関して“これは譲れないこと”なんだって。たまご焼きの作りかたは未久おばさんに教えてもらったけど」
「ふぅん」
「たぶん父さんは、塩味のたまご焼きが好きなんじゃないかな。お母さんがよく作ってくれてたって聞いたことあるから」
「そっか・・・。美味いよ、塩味のたまご焼き。俺初めて食べたけど、すげー美味い」
「うんっ。ホントに美味しい!」
「じゃあ明日からみんなの分も作ってくるね。各自二切れ分でいい?」
「か、感激・・!きよみ女史じゃないけど、地獄的に嬉しい!あ、雅希ちゃん、これ食べてみる?」
「いいの?」
「どうぞどうぞ。って作ったのは私じゃなくて、飛鳥さんなんだけどっ」
「料理上手でしょう、飛鳥さんって」
「分かるぅ?もう何でも上手なの!家事とか。それに勉強だってすっごくできるし教えかたも上手で」
「そっか。ねえ忍、お弁当それで足りてる?」
「いまんとこだいじょーぶ。それに今日は、帰りにみんなでなんかいろいろ食べるっしょ?」
「そうそう!飛鳥さんがね、いっぱい用意するからお腹空かせといてって伝言あったんだ!それであの、きよみ女史もぜひ、今日うちに来てほしいな」
「喜んで参加させていただきます」
「いろいろなっ!」
「神谷忍氏。そのツッコミは地獄的に意味不明ですが」
「そおかあ?」
「迷宮に入っていますよ」
「分かる~!ハハハッ!」

しゃべるとちょっと変わり者扱いされるきよみ女史だけど、二人とも初対面から自然に受け入れてくれて良かった。
忍や私にとって、きよみ女史は大切な女友だちだから・・・。

盛り上がっているきよみ女史と真珠と忍の三人を見ながら、自然と笑みがこぼれているところで、界人が私を小声で呼んだ。