「ん?雅希?」
「ねえ父さん」
「なんだ」
「たくさん存在する可能性は、私が視た未来のビジョンも含めて自分で選べるんだよね」
「おまえが“視てない”ビジョンも含めてな」
「あ・・・」
「未来のビジョンが視えるのは、何もおまえだけじゃねえ。俺の弟たちの中にも視えるヤツはいるし、頼人も視えるときがある。だがやつらは意図して視ないようにしている。何故か分かるか?」
「・・・視えたビジョンに翻弄されるから」
「まあそういうことだ。もし自分が死ぬビジョンが視えたとき、大抵の人は“もうすぐ自分が死ぬこと”に意識をフォーカスしてしまう。するとどうなる?」
「そのビジョンが現実になる可能性が高くなる・・・」と答えた界人に、父さんは「そのとおり。“死”自体は誰にでも起こることだが、そのビジョンを現実として“早々に引き寄せちまう”んだ」と解説した。