とっくに両目を閉じてほとんど眠りかけていた私は、「界人」という名前(それとも言葉?)を父さんから聞いた途端に目がバッチリと覚めてしまった。
しかも、そのままガバッと上体を起こすくらいの勢いまでつけていたくらいだ。
「ちょっと父さん!界人にしゃべったの?」
「いいや。あいつには“今日のフィジカルトレーニングに行けなくなった”と電話で伝えただけだ。今日はあいつを乗せて連れてく約束してたからな、“トレーニングに行くなら他の足を当たれ”と連絡しておく必要があった」
「あ・・そう」
「界人はゼロ課の候補生だ、あいつなりに推理したんだろ」
「・・・父さんがトレーニング指導を休まなきゃいけない非常事態が発生した。でもスマホ越しに聞こえる父さんの声は“いつもどおり普通”だった。だから父さんに何かあったんじゃない。父さんの関係者――家族――に何かあった、と」
「なんで事件じゃないと言いきれる」
「だってフィジカルトレーニングの指導日は父さん、非番なんでしょ。たとえ父さんくらい地位が上のデカでも、非番だったら事件発生の知らせは基本来ない。よほど危険性の高い事件じゃない限りは」と言う私に、父さんは少しニヤニヤ顔で私を見ながら何度か頷いている。
しかも、そのままガバッと上体を起こすくらいの勢いまでつけていたくらいだ。
「ちょっと父さん!界人にしゃべったの?」
「いいや。あいつには“今日のフィジカルトレーニングに行けなくなった”と電話で伝えただけだ。今日はあいつを乗せて連れてく約束してたからな、“トレーニングに行くなら他の足を当たれ”と連絡しておく必要があった」
「あ・・そう」
「界人はゼロ課の候補生だ、あいつなりに推理したんだろ」
「・・・父さんがトレーニング指導を休まなきゃいけない非常事態が発生した。でもスマホ越しに聞こえる父さんの声は“いつもどおり普通”だった。だから父さんに何かあったんじゃない。父さんの関係者――家族――に何かあった、と」
「なんで事件じゃないと言いきれる」
「だってフィジカルトレーニングの指導日は父さん、非番なんでしょ。たとえ父さんくらい地位が上のデカでも、非番だったら事件発生の知らせは基本来ない。よほど危険性の高い事件じゃない限りは」と言う私に、父さんは少しニヤニヤ顔で私を見ながら何度か頷いている。


