「そだな。昼休みの時間は限られてるし」
「食べる時間がなくなっちゃう!」

私たちはベンチに座ると、持ってきたお弁当をテーブルに広げた。

「改めて、こんにちは。魁界人です。よろしく」
「初めまして!こんにちは!佐渡真珠です。今後とも、どうぞよろしくお願いします!」
「私は井成きよみ。井戸の井に成りあがるの成(り)と書いて“いなり”と読みます。そして“きよみ”は平仮名です」
「はぁ・・」「な、るほど・・・」

きよみ女史の外見は、ごくごく普通の女子高生とそう変わりない。
だけど、しゃべりかたはとても独特なものがある。
たとえば、自分より年下にも丁寧語だし(相手全般に対してそうだ)、「カッコ」「カッコ閉じる」までわざわざ言うし、相手のことは、たとえ仲良くしている友だちでも毎回フルネームで呼ぶし、女性には「女史」、男性には「氏」をつける。これも年齢に関係なく、全員に。
だからきよみ女史と初めて会話すると、ほぼ全員が面食らうか、大いに戸惑う。
無愛想な私でさえ、内心はビックリしていたから、顔にその驚き具合が少しは出てしまったかもしれない。
けど、きよみ女史はとても面白いし、賢くて頭も良くて「知的美人」という言葉が良く似合う。
初対面のときは面食らったけど、私は最初からきよみ女史に好感を持った。