すると私たちの話を聞いてた(というか聞こえる距離の席の)なおくんが、「俺は“綿貫さん、カナダに突然留学した”って聞いたよ」と言った。
と思ったら、リュウが「アメリカだろ?」と言うし、かと思えばそうくんが「違うよ、イギリスでしょ?」と言い出す始末。
その一方でトトさまは、「私は“突然退学説”を聞いたよ」と言うんだから、やっぱりウワサってあてにならない・・・。

けど私は、綿貫さんのクラスメイトだったきよみ女史から直接聞いて、きよみ女史は担任の近江先生から聞いたんだ、信憑性は十分ある。
それに、1年特進の教室に今いる生徒の半数くらいが「突然退学説」のウワサを聞いている。

「てことは、やっぱり“退学”が優勢だろうな」という界人の呟きに、私は小さくうなずいて同意した。

「それから“突然”も。みんな共通して言ってる」
「そうだな」
「どっちにしてもよ、可哀想なのはやっぱまりあだろ。カレシと突然音信不通になったからのー、突如学園去られるとか。そんな風にいきなりバッサリ関係断ち斬られたらよ、カノジョとしての立場ねえってーか。ぶっちゃけ、自分が役立たずだと思うじゃん」
「しかもこれじゃあ綿貫さんがまリア充と別れようとしてたのかどうかも分かんない、“宙ぶら”な状態だしね」
「そりゃカレシとして最悪の仕打ちだろ。ったくユーマさん、何やってんだよ。カノジョに悲しい思いさせて泣かせるような男じゃねえって、俺は信じてたんだけどなぁ」