いつの間にか私たちより数メートル先に行ってた忍が「お~い!」と呼びかけたのをきっかけに、「界人、教室に戻ろう。もうすぐ授業が始まる」と私は言った。

「あ?ああ。雅希、俺・・」
「いつか知られることだから、界人には近いうちに話しておこうと思ってた。今は時間ないから後でちゃんと話す」
「うん。雅希」
「なに」
「ありがとな」

界人から想定外の言葉をもらった私は、眉間にしわを寄せて「なんで」と聞いた。

「俺が言いたかったことをおまえが言ってくれたから」
「どの部分が界人の言いたかったことなの」
「おまえから“今”、話を聞きたいけどさ、今はホントに時間がないっていうのが現実だから。だったら話を聞くのは“後”しかないだろ?」
「うん・・・そうだね」と言いながら気持ちうつむいた、そのとき。

界人が私の手をそっと握ってくれた。