「雅希」
「なに、界人」
「中間テストが終わる前の日、服買いに行こうよ。街中とか店も人が少ない時間帯だと俺は睨んでるんだけど」
「あ。確かにそうかもしれない。慶葉って他の高校とテストの日をずらしてるって聞いたことあるし」
「うん。それにテストはあと一日残ってるから、長居できないって前提つきで行けばサッサと用事終わらせることもできんじゃね?」と言う界人の顔を、私はまじまじと見た。

「もしかして界人、この週末のあいだずっと服買いに行くプランを考えてくれてたの」
「いやいやずっとじゃないけど・・うん、考えた。おまえにとってこれが最善なプランじゃないかと俺は思う」と言う界人に、私は頷いて同意した。

「ありがと。あのね、界人」
「ん?何」
「石、あの・・綿貫さんに注文した石」
「あぁうん」
「その子は界人にあげる用のだから」
「え?」と言った界人が止まったので、私も立ち止まった。

「雅希。それってまさか、俺へのプレゼント・・ってこと?」と恐る恐る聞く界人に、私は頷いた。

「クリスマスと誕生日を兼ねて。界人にはまだ秘密にしておこうと思ったんだけど、もうヘンなウワサが広がっちゃったから、今言っといた方がいいと思って」
「・・・ありがとな、雅希。俺、今すっげー嬉しい!ってあーっ!」
「どうしたの」
「俺、まだおまえの誕生日知らないってことに今気がついた!雅希の誕生日はいつっ!」

・・・やっぱりこういう状況で「言わない」、っていうわけにはいかないよね・・。
勢い込んで聞いた界人を伏し目がちに見ながら、私は軽く深呼吸した。

自分自身にも「勢い」をつけるために。
自分の誕生日を言いきるために。
そして、覚悟を決めるために。

私はもう気にしてないけど、たぶん界人に余計な気を使わせてしまうかもしれないから。 

「雅希?どうした」「・・・12月」「え?」
「12月、24日。界人と同じ日だよ」