「魁界人氏、神谷忍氏の男子二名がいない今、特に神谷雅希女史にお伝えしておきます」
「なに、きよみ女史」
「“今朝、神谷雅希女史が綿貫雄馬氏に告白した”というウワサが、今日は2年生の間でもちきりなのですが」
「え」「“わたぬきゆうま”さん?って、なんか聞いたことある名前」

私は思わず箸を止めて、きよみ女史の顔をまじまじと見た。

「今朝のことがもうウワサになってるの?しかもウソのウワサが」
「反対に“綿貫雄馬氏が神谷雅希女史に告白した”というパターン逆バージョンのウワサもありますし、“すでに二人はつき合っている”という飛躍し過ぎた未来形のウワサまで登場しています」
「ふーん。みんな暇人だね」
「なんでも、お二人は“人気の少ないところでヒソヒソ話をしては、秘密を共有するように顔を見合わせて微笑んでいた”という“誰が証言したのか分からない信憑性ゼロのコメント”もありますが」
「“私が綿貫さんに2年の廊下で石の注文をしていた”という真実からは、確かにかけ離れてる」
「あっ!“綿貫さん”って、雅希ちゃんがいつも石を買ってる“礼子さん”の息子さん!」
「そうだよ真珠」
「やはりそうでしたか。宝石の注文でしたら大声で話すことではないですし(闇取引ではないですけれども)」「違う違う」「闇じゃないから」
「ではお二人が“抱きしめ合っていた”という“ドラマチックに脚色されたロマンスあふれるウソの証言”は」
「綿貫さんと私が正面衝突して、綿貫さんが私の腕を支えてくれたから、私はしりもちつかなくて済んだ・・あ」