「よろしい。んじゃそろそろみんなんとこに戻ろ」
「うん。忍」
「ん?」
「ありがと」
「まー」
「なに」
「たまには界人にデレデレ甘えて頼ってやれよ」
「なんで私が」
「知ってるくせに。いくらあいつがイジられキャラでも、ずーっとツンだけってのはかわいそうっしょ。ほかの子に盗られたらどーすんのー?」
「どうもしない。あいつの選択に私が口出しする権利はないもん。それに“知ってるくせに”って何」
「どこまでもとぼける気だな。まあいいや。俺、“お兄ちゃん”らしく“年上の対応”をしてやる」

―――病室と思われるベッドに寝ている「数年後の私」の手をそっと握っているのは、「数年後の」界人―――。

私が視たビジョンは一瞬で消えたけど、こういう、年単位の未来が視えたのは、このときが初めてだったし、この先同じビジョンが現れることは二度となかった。
そしてこのビジョンが現れたのは、私がこれから背負うことになる運命が始まるという「警告」だったのかもしれない。

「まー?おい、まー。大丈夫か」
「・・・忍は知らないんだ。双子は後で生まれたほうが姉とか兄になるって」
「え。ちょっと待て。そういう前提なら俺とまーは双子っていう設定になるじゃん!それこそ強引過ぎっしょ!」

私の手を握っていた数年後の界人は、「息を引き取った私」とまだ別れたくないからか、悲しそうな顔をして泣いていた。