「いるけど、俺の初“愛”が成就する可能性は絶望的にめちゃ低いんだな、これが」
「そう」
「それでもいいんだ。今は一緒に過ごせるときがあれば、俺はそれでいいんだ」と、自分に言い聞かせるようにそう言った忍を、私はギュッと抱きしめたくなった。

忍を慰めるためというより、励ましたくなったから。
でも実際に抱きしめることはしなかった代わりに、「本気なんだね」と私は言った。

「もちよ!だから俺にとってこれは初“恋”じゃなくて、初“愛”レベルまで上がってんの」
「今の忍、カッコいいよ」
「“今”だけ!?」「うん」
「雅希ちゃん即答して斬った!でも、私も雅希ちゃんの意見に賛成だな。さっきの忍くんはカッコ良かったよ。飛鳥さんがいなかったら私、好きになってしまったかも・・・って、私は友だちとして、私は忍くんのことずっと好きだからね!」
「サンキューな、真珠ちゃん」
「忍の初愛が実るといいね。可能性はゼロじゃないんでしょ?」
「うーん。ま、恋愛ってのは相手があって成り立つことだからな、俺一人でどーこーしてもしょーがねえっしょ。それに宿命にも逆らえねえし」
「あのさ、忍が好きな人ってもしかして・・・雅希・・だったりする?」

界人のトンチンカンな質問に、その場は一瞬、シーンと静まり返った。