さよならの続き

「メッセージが返って来なくて、浮気でもされてるんじゃないかと思ったよ」

身体が強張って、箸を持つ手が止まった。

「でも、仕事頑張ってたんだよな。ごめんな。俺、ちょっと疑って」

安堵の笑みに満ちた顔が向けられる。

…そうだ。わかった。
メッセージが一晩返ってこないことは前にも何度かあったはずだけど、その時は『どうせ寝てたんだろ』で済んでいた。
でも今回そうじゃなかったのは…陽太が部屋まで訪ねて来たのは、この前の件で私が不安にさせたからだ。

胸がじくじくと痛む。
もう嘘をついていられない。
少なくとも、これから1年は私と航平は同じ部署なのだ。
今後私と航平の関係が陽太にバレない保証はない。
私と陽太が付き合っていることを知っているであろう安田くんはまだ同じ部署にいるのだから、そこから何か漏れる可能性だってある。
それなら今のうちに自分から打ち明けたほうがまだいい。

ごくりと唾をのみこんで、箸をテーブルに置いた。

「ごめん。嘘、ついてた」

陽太の箸が止まったのがわかった。
私の視線の先は自分の膝だ。彼の顔は見えない。
だけど、陽太が私の次の言葉を待っているのはわかる。
それなのに、この期に及んで私はどこまで話していいのか迷っている。