さよならの続き

見慣れたセダンは、もうエンジンをつけて待っていた。

「お疲れ様」
「うん、お疲れ様」

車に乗り込めば、いつものディフューザーのホワイトムスクが香る。
変わらない陽太の顔を見て、急に息苦しさから解放された気分になった。
昨日同じ部署で会っていたんだから一日で顔が変わるわけもないのに、何日も会っていなかったような感覚に陥る。

「どうした?疲れてる?」
「…ううん。春だから、ちょっと眠いだけ」
「有梨はいつでも眠いだろ」

陽太は笑いながら片手で器用にハンドルを回し始める。

「3区はどうだったの?」
「5区より回る件数は多いかもしれない。でも、会社からは前より近い区域だから」
「そう」

私よりもずっと精神的にタフな陽太は、新しい課でもすぐ順応してうまくやっていくんだろう。