「ねえ、航平。あなたは私に幸せになってほしいって言ったけど」

ちらっと私の顔を見た航平に、少しの不安も与えないように。
私は満面の笑みを向ける。

「私の幸せは、あなたです。結婚してください」

航平は目を見開き、揺れる瞳で私を見つめたあと、大きな手で顔を覆った。

「…バカだな、有梨」

湿る声を震わせ、私の背に腕を回して包み込む。

「プロポーズは俺がするはずだったのに、奪うなよ」

シャツ越しに伝わる温もりが心地いい。
幸せは間違いなくここにある。
それを心から実感できる。
私の気持ちは、今までの人生で一番満たされている。

身体を少し離し、航平は私の頬に手を添えて真っ直ぐに私を見据える。
その瞳にはもう、なんの迷いも感じない。

「有梨、愛してる。ずっと俺のそばにいて」
「うん。私も、あなたを愛してる。ずっとそばにいるよ」

誰もいない海辺。
空を優雅に舞う白い鳥だけが、私たちのプロポーズを聞いていた。