「ねえ、有梨。私たちね、西嶋さんがいなくなってから誓いの言葉を考え直したの」
「え?」

『命ある限りそばに寄り添い、たくさんの愛で満たしていくことを誓いますか?』

「私が有梨だったらどうするか考えた。もうすぐ死ぬから別れましょうなんて言われても絶対納得しない。最期まで隣で笑っていたいと思う。だからね」

吉岡さんがやってきて、ずっと話を聞いていたみたいに、渚の肩に手を添えた。
ふたりがやさしい笑みをこちらに向ける。

「有梨の想いが西嶋さんに届いてほしい。ふたりがもう一度会って、幸せになれるように願ってるよ」
「渚…」

隣でうんうんとうなづいていた陽太が微笑む。

「有梨、会社を辞めてまで選ぶ道なんだから、絶対西嶋さんのこと見つけろよ」
「…っうん」

航平がいなくなってから、陽太は忙しい中いつも私を気にかけ、励まして泣ける場所を与えてくれた。
退職の決意を後押ししてくれたのも陽太だ。

「ありがとう、陽太。感謝してもしきれないよ」
「いつか西嶋さんと一緒に恩返しに来いよ」

3人に背中を押され、私はこれから新しい一歩を踏み出す。